鎌倉時代 前輪高29.7 後輪高35.0





和歌の内容にちなんだ図柄に、その歌の一部の文字を紛れ込ませて歌意を表現する「葦手絵」の螺鈿意匠が施された、黒漆塗の鞍。  
松に絡み付く葛の葉の間に配された「恋」「時雨」「原」などの文字から、慈円の「わが恋は松を時雨にそめかねて 眞葛が原に風騒ぐなり」(『新古今和歌集』所載)という歌が読み取れる。
「時雨がいくら降っても松が紅葉しないように、あなたが私になびいてくれないので、葛の原が風に騒ぐように、あなたを待つ私の心は千々に乱れるばかり」という恋の歌が、繊細かつ大胆に武人の鞍を飾っている。

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